2012/05/03

森の集いができるまで その3

◆森の集いに込めた想い

出口:主催者の想いの中にも書いたことなので、読んでいただきたいと思うんですけど、僕は震災のあと、支援に被災地や福島を訪れているんですけど、そういうなかで、いまはちょっと世の中がいびつというか、なにかが自分たちにつきつけられているんじゃないかというイメージがすごくあります。それをより未来につながる形に持って行きたいというのが、森の集いを企画した発端です。

それは、都市生活であったり、エネルギーであったり、いろんなことが見直されているなかで、人と人のつながりとか、そういうことがもう一度見直されてきていると思うんです。いま、各地でローカルなマーケットが点々と開かれていて、その中で、お金にしてもエネルギーにしても、すごくいいまわり方をしている場所がある。大阪の市内にはあんまりそういう場所がないんですよ。まあ都市の規模が大きすぎるとか、いろんなことがあると思うんですけど。そこにいま地方ではこういう動きがありますよってもっていって訴えかける。どうですかって提案する。考えるきっかけとか、知るきっかけを作る。そういうことがしたいと思っています。

その動きのイメージを僕らのなかでは「樹」のイメージでとらえています。樹というのは、地上の見える部分だけを大きくしても、地下の根っこの部分がしっかりしていないと、風が吹いたり、雨が降ったり、それこそ、津波が来たりすると、押し倒されてしまう。でも地上に見えている部分と同じくらい、地下に広がっている根の部分がしっかりしていれば、強固に立っている状態が保たれると思うんです。いまの消費社会というのは、上ばっかりを見て、上ばっかりを求めて、ちょっといびつな形になっている気がします。だから、もっと根っこの部分をきちんと考えて、広げていかないとおかしくなってしまうんじゃないか。じゃあ、その根っこの部分っていうのは何かって考えると、僕のなかでは、人と人とのつながりや、ネットワークが根っこになるんじゃないかと思うんです。

たとえばいまの消費社会では、買う人の方がえらくて、売る側の方が下になっている。上下というか、主従というか、対等でない関係性。でもそうじゃなくて、売買っていう行為を物々交換のレベル、労働の対価の対等な交換にまでさかのぼる、そういうことがしたいと思っています。買う、売るの関係だけじゃなくて、育てる人と食べる人の関係をもう一度つくりなおすとか、人と人がお互いを理解しながらそれぞれの活動を支援するっていうのが、原点なんじゃないかなとイメージしています。

そういうネットワークがしっかり確立していれば、もし何かの災害が起こったときにも、いろんなことができるんじゃないかっていうのが、今回、震災の支援に自分が実際に動いてみて感じたことでした。僕はもともとそんなにマーケットに興味はなかったんですよ。大きなことをやろうとも思っていなかったし。でも、そういうマーケットがあることで、普段からコミュニケーションがとれて、お互いのやっていることを知っていれば、何かが起こったときに助け合うことができる。じゃあ「食料を2000人分集めたい」ってなったときにも、打てば響く人たちが集まっているから、ひとりでは絶対に無理な数を集めることができる。

そういうことが、奈良のオーガニックマーケットでも、京都の綾部の三土市でもできた。マーケットってそういう可能性のあるものなんだなって、今回すごく思ったんです。そういうマーケットがいまは各地に点在しているものなんだけど、それがなんらかの形でつながりを持てば、ひとつの動きとして広がりが出るし、いろんな形の展開ができるんじゃないかと思った。そういうつながりを作るっていうのが、今回マーケットっていう形は形なんですけど、森の集いをやろうとするきっかけです。

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